a good view のポスターはなぜ「正方形」なのか - a good view

a good view のポスターはなぜ「正方形」なのか

よく聞かれるんです。「なんで正方形ばっかりなの?」

たしかに、一般的なアートポスターというと、A1(594mm×841mm)、B2(515mm×728mm)、A2(420mm×594mm)など、長方形のものが主流です。実際、キャンバスや紙の多くも古くから長方形が基本で、名画と呼ばれる作品の多くもその形式で描かれています。

これは、人物や風景などの被写体が長方形に収まりやすいことに起因します。風景画なら横長が広がりを生み、人物画なら縦長が安定した構図になります。アーティストは、表現する対象に応じて長方形を選ぶのが自然だったのです。

そんな中で、私たちがなぜあえて正方形にこだわっているのか——。
今回はその理由を、少しだけまじめにお話ししたいと思います。

 


正方形は、実はとても日本的

紙文化そのものは長方形が基本ですが、日本の生活文化の中には、正方形が自然に入り込んでいる場面が数多くあります。たとえば、風呂敷、折り紙、ハンカチ、畳の配置、四畳半の茶室など※1。

こうした正方形は、単に機能的だからだけでなく、日本人特有の「均整」や「余白」に対する美意識と深く結びついてきました※2。正方形の中に静けさや秩序を見出す感覚は、日常の中で育まれてきた感性の一部なのかもしれません。

 

ここからは、正方形というかたちそのものが持つ魅力についてご紹介します。

 

均整のとれた美しさ

正方形はすべての辺と角が等しいため、極めて対称的でバランスの取れた形です。見る人に安心感や安定感を与え、空間に穏やかな調和をもたらしてくれます※3。

 

コンパクトで空間に収まりやすい

長方形に比べて、正方形は壁面の中央やコーナーにも収めやすく、飾るスペースを選びません。限られた空間でも圧迫感を与えず、スッと溶け込んでくれます。

 

モダンで洗練された印象

正方形は、幾何学的にもっとも完成されたかたちのひとつです。そのシンプルさゆえに、モダンな空間やミニマルなインテリアとの相性も良好。主張しすぎず、それでいて確かな存在感を放ちます※4。

 

 組み合わせ次第で自由自在に

正方形は、縦・横・格子状と並べ方のバリエーションが豊富です。複数枚を並べても構図が崩れにくく、組み合わせることで横長にも縦長にも展開できます。色やモチーフが異なる作品でも、形が揃っていれば統一感のあるディスプレイがつくりやすいのも魅力です。

 

飾り方しだいで、どんな表情にも

私自身、自宅では縦長・横長・正方形とさまざまな作品を飾っていますが、特に正方形は複数並べることで全体の印象を自在に変えられるのが面白いと感じています。

1枚で飾れば静かな存在感。2枚以上を並べれば、空間の流れや広がりを演出することもできる。飾る人の感性や暮らし方に寄り添いながら、どんな空間にも自然となじんでくれる。それが正方形の、いちばんの魅力ではないでしょうか。

 

 

出典・参考資料

※1:藤井健三『風呂敷文化と日本人』(淡交社, 2008)
※2:松岡正剛『日本流 ― 思考のかたち』(ちくま学芸文庫, 2006)
※3:Alex W. White『The Elements of Graphic Design』(Allworth Press, 2011)
※4:同上

 

 

 

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