コレクション: 風景画 landscape

Our Artists

当店に作品をご提供くださっている作家の皆さまをご紹介するページです。画家、イラストレーター、テキスタイルデザイナーなど、従来のカテゴリーにとらわれることなく、アートとデザインの境界を自由に行き来する、国内外の多彩な作家陣が参加しています。

作家紹介
  • 部屋を彩るインテリアのアクセント

    部屋を彩るインテリアのアクセント

    部屋の雰囲気は、壁や床、家具といった大きな要素だけで決まるわけではありません。そこに“ひとさじ”の彩りや質感を加えるだけで、空間はぐっと豊かに変わります。この役割を果たすのが「インテリアのアクセント」です。 アクセントとは、色や形、素材感で視線を引き、単調になりがちな空間にリズムや変化を与える存在です。クッションやラグ、照明、観葉植物、オブジェなど、決して大きくないアイテムでも、その効果を想像以上に感じることがあります。ひとつ加えるだけで部屋にテーマ性が生まれ、印象が引き締まります。 今回は、そんな「インテリアのアクセント」の役割や効果、選び方のヒントに加え、身近に取り入れやすいアートポスターの活用法について掘り下げてみます。   アクセントがもたらす効果 視線の焦点をつくる部屋全体を見渡したとき、自然と目が止まるポイントがあると、空間が整理されて見えやすくなります。たとえば、白い壁に飾ったアートや、ソファに置いた鮮やかなクッションがひとつあるだけで、そこが部屋の“見せ場”になります。視線の流れが整うことで、多くの人が安心感を覚え、過ごしやすさが増すと考えられます。 季節感や雰囲気を変える春は淡い色、夏は涼しげなブルー、秋は深みのあるブラウンやオレンジ、冬は温かみのあるレッドやゴールドなど、色や素材で四季を表現できます。季節の移ろいを取り入れることで、暮らしにリズムや豊かさが加わります。 余談ですが、海外の家庭に比べると日本の住宅は白や木目など控えめな色が多い傾向があります。都市部の住まいが比較的コンパクトで「明るく広く見せたい」という意識が強いことに加え、畳や障子、漆喰壁といった淡い色調を基調とした伝統的な住まいの影響も背景にあると考えられます。そのため、アクセントカラーや小物を取り入れたときの変化が際立ちやすいのも、日本の住空間ならではの特徴と言えるでしょう。 奥行きや広がりを出す視線の流れを工夫することで、空間に奥行きが生まれます。たとえば縦長のアートは天井を高く、横長のラグは部屋を広く見せる効果があります。正方形のアートは縦横どちらかに強調がなく、安定感を与えやすい形です。特に複数を並べるとリズム感が生まれ、壁面に整然とした印象を与えます。 心理的効果を高めるアクセントには感情や行動に作用する可能性も指摘されています。グリーンや木目調のアイテムは安心感をもたらし、ブルーは集中を助け、赤やオレンジは会話を弾ませる傾向があるといわれます。ただし効果には個人差があるため、あくまで目安と考えるとよいでしょう。   アクセントを選ぶときのポイント ベースカラーとの調和床・壁・家具などのベースカラーと馴染む色を選ぶと、アクセントが自然に溶け込む傾向があります。反対色を使う場合は、面積や彩度を抑えてポイント的に配置すると上品にまとまりやすいとされます。 主役は絞るアクセントアイテムをあれこれ置くと、視線が散って落ち着かない印象になりがちです。部屋ごとに主役を1〜2点に絞ると、統一感が生まれます。アートを複数並べる場合も、サイズやフレームを揃えて“ひとまとまり”に見せれば、一つの主役として空間にリズムを与えることができます。 サイズと素材感小さすぎると存在感がなく、大きすぎると圧迫感を与えることがあります。部屋の広さや家具とのバランスを見てサイズを選び、質感も空間の雰囲気に合わせると完成度が高まります。金属やガラスの素材は都会的でシャープに、布や木は柔らかく温かい印象を与えます。   部屋別・アクセントの実例 リビング家族や来客が集まる空間は、視線を集める“主役”を一つ決めると印象がぐっと高まる傾向があります。ソファの上に鮮やかなクッションを置き、背面の壁にアートポスターを一枚飾ると、空間に華やぎとまとまりを感じやすくなります。観葉植物を添えることで、さらに奥行きとリラックス感が加わります。 寝室落ち着きが求められる寝室は、淡い色合いのアクセントが向いているといわれます。ベッドサイドの照明を温かみのあるトーンに変え、柔らかな布地のクッションやブランケットを足元に。壁に小さめの正方形アートを並べると、規則的なリズムが生まれ、安心感を与えやすくなります 玄関住まいの第一印象を決める玄関は、アクセントを置くのに適した場所です。シューズボックスの上に小さな花瓶を置き、壁にアートポスターを一枚加えると、おもてなしの雰囲気を演出しやすくなります。狭い空間だからこそ、アクセントが効果的に映えるケースが多いのでしょう。   アートポスターという選択肢 数あるアクセントアイテムの中でも、特に取り入れやすく効果が期待できるのがアートポスターです。ポスターは壁面に“見せ場”をつくり、色彩や構図、モチーフによって空間の雰囲気を自在に変えることができます。 手軽に模様替えできるフレームサイズを統一しておけば、中身を差し替えるだけで季節や気分に合わせた演出が可能になります。数枚を入れ替えるだけでも、模様替えをしたような新鮮さを感じることでしょう。 複数枚の配置でリズムを生む一枚で主役をつくるだけでなく、大小のポスターを組み合わせたり、等間隔に並べることで、壁面にリズムや物語性を持たせやすくなります。 照明で印象が変わるスポットライトや間接照明で照らすと、色や質感が引き立ち、作品の印象が変わるとされています。リビングなら柔らかい光でくつろぎを、ワークスペースなら明るくシャープに、と光の当て方でも演出が変わります。 コストを抑えつつ表現の幅が広がる原画に比べて手頃な価格ながら、部屋の完成度を高める効果が期待できます。さらに、好みや気分で気軽に差し替えられるため、暮らしに“動き”を取り込む手段として適しています。 インテリアのアクセントは「小さな存在で大きな変化を生む」といわれます。その中でもアートポスターは、手軽さと表現力を兼ね備え、日常に取り入れやすい選択肢。単に飾るだけでなく、視線・色彩・心理的効果を意識すれば、暮らしの質はぐっと高まるはず。 リビング、寝室、玄関といった身近な空間に一枚添えるだけでも、生活はより豊かで心地よいものになるでしょう。ぜひ日々の生活に、ひとつのアクセントを加える楽しみを見つけてみてください。  ...

    部屋を彩るインテリアのアクセント

    部屋の雰囲気は、壁や床、家具といった大きな要素だけで決まるわけではありません。そこに“ひとさじ”の彩りや質感を加えるだけで、空間はぐっと豊かに変わります。この役割を果たすのが「インテリアのアクセント」です。 アクセントとは、色や形、素材感で視線を引き、単調になりがちな空間にリズムや変化を与える存在です。クッションやラグ、照明、観葉植物、オブジェなど、決して大きくないアイテムでも、その効果を想像以上に感じることがあります。ひとつ加えるだけで部屋にテーマ性が生まれ、印象が引き締まります。 今回は、そんな「インテリアのアクセント」の役割や効果、選び方のヒントに加え、身近に取り入れやすいアートポスターの活用法について掘り下げてみます。   アクセントがもたらす効果 視線の焦点をつくる部屋全体を見渡したとき、自然と目が止まるポイントがあると、空間が整理されて見えやすくなります。たとえば、白い壁に飾ったアートや、ソファに置いた鮮やかなクッションがひとつあるだけで、そこが部屋の“見せ場”になります。視線の流れが整うことで、多くの人が安心感を覚え、過ごしやすさが増すと考えられます。 季節感や雰囲気を変える春は淡い色、夏は涼しげなブルー、秋は深みのあるブラウンやオレンジ、冬は温かみのあるレッドやゴールドなど、色や素材で四季を表現できます。季節の移ろいを取り入れることで、暮らしにリズムや豊かさが加わります。 余談ですが、海外の家庭に比べると日本の住宅は白や木目など控えめな色が多い傾向があります。都市部の住まいが比較的コンパクトで「明るく広く見せたい」という意識が強いことに加え、畳や障子、漆喰壁といった淡い色調を基調とした伝統的な住まいの影響も背景にあると考えられます。そのため、アクセントカラーや小物を取り入れたときの変化が際立ちやすいのも、日本の住空間ならではの特徴と言えるでしょう。 奥行きや広がりを出す視線の流れを工夫することで、空間に奥行きが生まれます。たとえば縦長のアートは天井を高く、横長のラグは部屋を広く見せる効果があります。正方形のアートは縦横どちらかに強調がなく、安定感を与えやすい形です。特に複数を並べるとリズム感が生まれ、壁面に整然とした印象を与えます。 心理的効果を高めるアクセントには感情や行動に作用する可能性も指摘されています。グリーンや木目調のアイテムは安心感をもたらし、ブルーは集中を助け、赤やオレンジは会話を弾ませる傾向があるといわれます。ただし効果には個人差があるため、あくまで目安と考えるとよいでしょう。   アクセントを選ぶときのポイント ベースカラーとの調和床・壁・家具などのベースカラーと馴染む色を選ぶと、アクセントが自然に溶け込む傾向があります。反対色を使う場合は、面積や彩度を抑えてポイント的に配置すると上品にまとまりやすいとされます。 主役は絞るアクセントアイテムをあれこれ置くと、視線が散って落ち着かない印象になりがちです。部屋ごとに主役を1〜2点に絞ると、統一感が生まれます。アートを複数並べる場合も、サイズやフレームを揃えて“ひとまとまり”に見せれば、一つの主役として空間にリズムを与えることができます。 サイズと素材感小さすぎると存在感がなく、大きすぎると圧迫感を与えることがあります。部屋の広さや家具とのバランスを見てサイズを選び、質感も空間の雰囲気に合わせると完成度が高まります。金属やガラスの素材は都会的でシャープに、布や木は柔らかく温かい印象を与えます。   部屋別・アクセントの実例 リビング家族や来客が集まる空間は、視線を集める“主役”を一つ決めると印象がぐっと高まる傾向があります。ソファの上に鮮やかなクッションを置き、背面の壁にアートポスターを一枚飾ると、空間に華やぎとまとまりを感じやすくなります。観葉植物を添えることで、さらに奥行きとリラックス感が加わります。 寝室落ち着きが求められる寝室は、淡い色合いのアクセントが向いているといわれます。ベッドサイドの照明を温かみのあるトーンに変え、柔らかな布地のクッションやブランケットを足元に。壁に小さめの正方形アートを並べると、規則的なリズムが生まれ、安心感を与えやすくなります 玄関住まいの第一印象を決める玄関は、アクセントを置くのに適した場所です。シューズボックスの上に小さな花瓶を置き、壁にアートポスターを一枚加えると、おもてなしの雰囲気を演出しやすくなります。狭い空間だからこそ、アクセントが効果的に映えるケースが多いのでしょう。   アートポスターという選択肢 数あるアクセントアイテムの中でも、特に取り入れやすく効果が期待できるのがアートポスターです。ポスターは壁面に“見せ場”をつくり、色彩や構図、モチーフによって空間の雰囲気を自在に変えることができます。 手軽に模様替えできるフレームサイズを統一しておけば、中身を差し替えるだけで季節や気分に合わせた演出が可能になります。数枚を入れ替えるだけでも、模様替えをしたような新鮮さを感じることでしょう。 複数枚の配置でリズムを生む一枚で主役をつくるだけでなく、大小のポスターを組み合わせたり、等間隔に並べることで、壁面にリズムや物語性を持たせやすくなります。 照明で印象が変わるスポットライトや間接照明で照らすと、色や質感が引き立ち、作品の印象が変わるとされています。リビングなら柔らかい光でくつろぎを、ワークスペースなら明るくシャープに、と光の当て方でも演出が変わります。 コストを抑えつつ表現の幅が広がる原画に比べて手頃な価格ながら、部屋の完成度を高める効果が期待できます。さらに、好みや気分で気軽に差し替えられるため、暮らしに“動き”を取り込む手段として適しています。 インテリアのアクセントは「小さな存在で大きな変化を生む」といわれます。その中でもアートポスターは、手軽さと表現力を兼ね備え、日常に取り入れやすい選択肢。単に飾るだけでなく、視線・色彩・心理的効果を意識すれば、暮らしの質はぐっと高まるはず。 リビング、寝室、玄関といった身近な空間に一枚添えるだけでも、生活はより豊かで心地よいものになるでしょう。ぜひ日々の生活に、ひとつのアクセントを加える楽しみを見つけてみてください。  ...

  • 甲府市のウフ フェリア店さまで、a good view のポップアップイベントが開催中

    甲府市のウフ フェリア店さまで、a good view のポップアップイベントが開催中

    甲府市郊外に佇む雑貨店 「ウフ フェリア店」さまで、a good view のポップアップイベントが開催中です。 店名の「oeuf(ウフ)」はフランス語で“卵”。雑貨を卵にたとえ、「お客様とともに温め、育てていきたい」という想いが込められています。 店内には、暮らしを心地よく彩るキッチン雑貨やインテリア小物、贈り物にぴったりのアイテムが並びます。ナチュラルで温かみのあるセレクトは、手に取るだけで気持ちをやわらげてくれるよう。 甲府の街中から少し足をのばせば、ゆったりとした時間の中で、日常に寄り添う“お気に入り”に出会えるお店です。     ウフ フェリア店店舗住所:  〒400-0046 山梨県甲府市下石田2丁目29−4 フェリアビル1F開催期間: 9/27(土)~  10/19(日)営業時間: 11:00~20:00https://www.instagram.com/oeuf.feria/  

    甲府市のウフ フェリア店さまで、a good view のポップアップイベントが開催中

    甲府市郊外に佇む雑貨店 「ウフ フェリア店」さまで、a good view のポップアップイベントが開催中です。 店名の「oeuf(ウフ)」はフランス語で“卵”。雑貨を卵にたとえ、「お客様とともに温め、育てていきたい」という想いが込められています。 店内には、暮らしを心地よく彩るキッチン雑貨やインテリア小物、贈り物にぴったりのアイテムが並びます。ナチュラルで温かみのあるセレクトは、手に取るだけで気持ちをやわらげてくれるよう。 甲府の街中から少し足をのばせば、ゆったりとした時間の中で、日常に寄り添う“お気に入り”に出会えるお店です。     ウフ フェリア店店舗住所:  〒400-0046 山梨県甲府市下石田2丁目29−4 フェリアビル1F開催期間: 9/27(土)~  10/19(日)営業時間: 11:00~20:00https://www.instagram.com/oeuf.feria/  

  • 会議室にこそ、アートを飾ろう

    会議室にこそ、アートを飾ろう

    会議室(ミーティングルーム)は、どうしても少し緊張感の漂う空間です。重要なプレゼンテーション、取引先との打ち合わせ、時には社内の意見がぶつかる議論の場にもなります。空間としては機能的で整っていても、気持ちが“構える”場になりがちです。 そんな会議室に、思わず口元がゆるむようなアートがあったらどうでしょう。視線が自然とそちらに向かい、ふっと緊張がほどける。そんな「気を抜ける」瞬間があることで、空気がやわらぎ、会話のテンポが軽やかになるのではないでしょうか。   スタイリッシュな空間にも、ちょっとした“遊び心”を 近年のオフィスは洗練されたインテリアが多く、会議室もシンプルでモダンな印象に仕上げられていることが少なくありません。そういった空間こそ、アートがよく映えます。 たとえば、無機質になりがちな会議室に、にやっと笑みがこぼれるようなユーモラスな動物のアートをひとつ。あるいは、静かな風景ややわらかい抽象画で、視覚的な“抜け”をつくってみる。そうした仕掛けが、思考を切り替えたり、和やかなコミュニケーションを促したりするのです。   目的に合わせてアートの役割を選ぶ 動物をモチーフにしたアートといっても、その印象はさまざまです。ユーモアのある表情やポーズの作品は、会議の緊張をやわらげ、空気を和ませる効果があります。 また、部署や会議の目的によって、飾るアートのテイストを変えることで、より効果的な空間演出が可能になります。 ・営業部門には、動きや開放感のある動物や風景のアート。活発な議論や前向きな提案が生まれやすくなります。 ・クリエイティブ部門では、色彩豊かな抽象画や幻想的な構図など、自由な発想を刺激するものがおすすめ。 ・経理・管理部門には、緑豊かな自然風景や静かな静物画など、落ち着きと集中を促すアートが適しています。 このように、アートは単なる装飾ではなく、空間と人の関係性に作用する“道具”としても機能します。   生産性と快適性に影響する“美的環境” アートを含む「美的な空間」が仕事にポジティブな影響を与えることは、いくつかの研究でも明らかになっています。 たとえば、英国エクセター大学のCraig Knight博士らの研究(2010)では、従業員がアートや植物の配置に関与したオフィス空間で働く場合、何も装飾のない“殺風景な空間”と比べて生産性が最大32%高くなったという結果が示されています。※1 また、2014年カーディフ大学を含む国際チームによる実際のオフィスを使った研究では、実際のオフィスに「生きた観葉植物」を導入するだけで生産性が15%向上し、集中や満足度、知覚される空気質も改善したと報告されています。※2 さらに、BCA(Business Committee for the Arts)× APAAが全米32社・800人超を対象とした調査では、オフィスにアートがあることで「ストレスが軽減された」と答えた人が78%、「創造性が高まった」と答えた人が64%にものぼりました。※3 “余白のある空間”が人を動かす 無機質で緊張感のある会議室(ミーティングルーム)に、ちょっとしたやわらかさやユーモアのあるアートを。それだけで、空間の温度は変わります。会話に笑顔が生まれたり、沈黙が和らいだり。ときには、新しいアイデアのきっかけになるかもしれません。 空間にアートを飾ることは、単なる装飾ではなく、心のリズムを整える“しくみ”をつくることでもあります。部署や目的に応じたアート選びを取り入れて、会議という場を、もっと自由でポジティブな空間にできるはずです。 まずは小さな一枚から試してみませんか。...

    会議室にこそ、アートを飾ろう

    会議室(ミーティングルーム)は、どうしても少し緊張感の漂う空間です。重要なプレゼンテーション、取引先との打ち合わせ、時には社内の意見がぶつかる議論の場にもなります。空間としては機能的で整っていても、気持ちが“構える”場になりがちです。 そんな会議室に、思わず口元がゆるむようなアートがあったらどうでしょう。視線が自然とそちらに向かい、ふっと緊張がほどける。そんな「気を抜ける」瞬間があることで、空気がやわらぎ、会話のテンポが軽やかになるのではないでしょうか。   スタイリッシュな空間にも、ちょっとした“遊び心”を 近年のオフィスは洗練されたインテリアが多く、会議室もシンプルでモダンな印象に仕上げられていることが少なくありません。そういった空間こそ、アートがよく映えます。 たとえば、無機質になりがちな会議室に、にやっと笑みがこぼれるようなユーモラスな動物のアートをひとつ。あるいは、静かな風景ややわらかい抽象画で、視覚的な“抜け”をつくってみる。そうした仕掛けが、思考を切り替えたり、和やかなコミュニケーションを促したりするのです。   目的に合わせてアートの役割を選ぶ 動物をモチーフにしたアートといっても、その印象はさまざまです。ユーモアのある表情やポーズの作品は、会議の緊張をやわらげ、空気を和ませる効果があります。 また、部署や会議の目的によって、飾るアートのテイストを変えることで、より効果的な空間演出が可能になります。 ・営業部門には、動きや開放感のある動物や風景のアート。活発な議論や前向きな提案が生まれやすくなります。 ・クリエイティブ部門では、色彩豊かな抽象画や幻想的な構図など、自由な発想を刺激するものがおすすめ。 ・経理・管理部門には、緑豊かな自然風景や静かな静物画など、落ち着きと集中を促すアートが適しています。 このように、アートは単なる装飾ではなく、空間と人の関係性に作用する“道具”としても機能します。   生産性と快適性に影響する“美的環境” アートを含む「美的な空間」が仕事にポジティブな影響を与えることは、いくつかの研究でも明らかになっています。 たとえば、英国エクセター大学のCraig Knight博士らの研究(2010)では、従業員がアートや植物の配置に関与したオフィス空間で働く場合、何も装飾のない“殺風景な空間”と比べて生産性が最大32%高くなったという結果が示されています。※1 また、2014年カーディフ大学を含む国際チームによる実際のオフィスを使った研究では、実際のオフィスに「生きた観葉植物」を導入するだけで生産性が15%向上し、集中や満足度、知覚される空気質も改善したと報告されています。※2 さらに、BCA(Business Committee for the Arts)× APAAが全米32社・800人超を対象とした調査では、オフィスにアートがあることで「ストレスが軽減された」と答えた人が78%、「創造性が高まった」と答えた人が64%にものぼりました。※3 “余白のある空間”が人を動かす 無機質で緊張感のある会議室(ミーティングルーム)に、ちょっとしたやわらかさやユーモアのあるアートを。それだけで、空間の温度は変わります。会話に笑顔が生まれたり、沈黙が和らいだり。ときには、新しいアイデアのきっかけになるかもしれません。 空間にアートを飾ることは、単なる装飾ではなく、心のリズムを整える“しくみ”をつくることでもあります。部署や目的に応じたアート選びを取り入れて、会議という場を、もっと自由でポジティブな空間にできるはずです。 まずは小さな一枚から試してみませんか。...

  • 植物を飾る効果とは? 心と空間を満たす“植物の力”

    植物を飾る効果とは? 心と空間を満たす“植物の力”

    画像は一栁綾乃さんのアトリエ   自宅や会社、店舗に植物を飾ることが一般的になったのはいつからでしょう?今や当たり前すぎて、いつからなんて意識することすらありませんね。でも、空間に植物を取り入れる習慣が広まったのには、いくつかの理由があります。   植物の心理的・生理的効果 植物には、ストレスを軽減し、リラックス効果をもたらすことが科学的に証明されています。例えば、1989年にNASAが発表した研究では、植物が空気中の有害物質を除去する働きを持つことが示されました※1。また、オフィス環境に植物を取り入れることで、従業員の生産性が向上するという研究結果もあります※2。   空間のデザイン性向上 植物はインテリアの一部としても重宝され、無機質な空間に温かみを加えたり、空間のアクセントとなる役割を果たします。特に、北欧やジャパンディスタイル(日本と北欧のミックス)のインテリアでは、自然素材との調和を意識したデザインが好まれ、植物が重要な要素となっています。   ライフスタイルの変化 都市化が進むにつれて、日常的に自然と触れ合う機会が減少しました。そのため、室内に植物を取り入れることで、自然とのつながりを求める人が増えているとも考えられます。   植物が屋内に普及した歴史 植物を屋内に飾る習慣は古くから存在しますが、一般に広く普及し、当たり前の存在となったのはいくつかの段階を経てのことです。 ・古代から17世紀:富裕層の嗜み古代エジプトやギリシャ、ローマでは、既に富裕層が鉢植えの植物を屋内で楽しんでいました。中国でも盆栽文化のように古くから室内で植物を育てる習慣があります。17世紀の大航海時代には、ヨーロッパに珍しい異国の植物が持ち込まれ、貴族や裕福な人々の間で熱帯植物への関心が高まりました。 ・19世紀(ヴィクトリア朝時代):一般家庭への普及の兆し室内植物の普及に最も大きな影響を与えたのは、19世紀のヴィクトリア朝時代です。暖房技術の進歩やガラス製造の発展により、ガラス温室(ワーディアンケースなど)が普及し、繊細な熱帯植物を屋内で育てることが容易になりました。この時代には、中流階級の間でも室内植物がステータスシンボルとして広く受け入れられ、ヤシやシダなどが人気を博しました。 ・20世紀以降:より身近な存在へ第二次世界大戦後、オフィス環境に手入れのしやすい植物が導入され始めました。特に1970年代には、手軽に育てられる品種が普及し、マクラメのプラントハンガーなどと共に、家庭で日常的に植物を飾るブームが到来。より多くの人々にとって室内植物が身近な存在となっていきました。 ・現代:ライフスタイルの一部に近年では、パンデミックによる在宅時間の増加や、自然とのつながりを求める意識の高まり、SNSを通じた「ボタニカルライフ」の流行などにより、植物を自宅やオフィス、店舗に飾ることがさらに一般的で当たり前のこととなっています。   では、本物の植物でなくても、例えば植物画でも同様の効果が期待できるのでしょうか? これについては、完全に同じ効果とは言えませんが、心理的なリラックス効果や空間の印象を変える力は十分にあります。   視覚的な癒し 植物の画像や絵を見ることによって、自然を連想し、リラックスできることが研究で示されています※3。実際、医療施設やオフィスの壁に自然の風景画を飾ることで、ストレスが軽減されたという調査結果も多数ありますし、わたし自身が実感しています。 かのナイチンゲールも著作『看護覚え書』のなかで「環境が患者の回復に与える影響」について述べており、特に 「光、空気、静けさ、そして美しい景色」が重要であることを強調しています。彼女は、病室の窓からの眺めや、壁にかけられた絵などの視覚的要素が患者の精神状態に影響を与え、回復を助けると指摘しています※4。   インテリアとしての調和 植物の絵は、生花や観葉植物と違い、手入れ不要でありながら、ナチュラルな雰囲気を演出できます。特に、水彩画やボタニカルアートは、シンプルな空間にも馴染みやすく、上品なアクセントとして機能します。...

    植物を飾る効果とは? 心と空間を満たす“植物の力”

    画像は一栁綾乃さんのアトリエ   自宅や会社、店舗に植物を飾ることが一般的になったのはいつからでしょう?今や当たり前すぎて、いつからなんて意識することすらありませんね。でも、空間に植物を取り入れる習慣が広まったのには、いくつかの理由があります。   植物の心理的・生理的効果 植物には、ストレスを軽減し、リラックス効果をもたらすことが科学的に証明されています。例えば、1989年にNASAが発表した研究では、植物が空気中の有害物質を除去する働きを持つことが示されました※1。また、オフィス環境に植物を取り入れることで、従業員の生産性が向上するという研究結果もあります※2。   空間のデザイン性向上 植物はインテリアの一部としても重宝され、無機質な空間に温かみを加えたり、空間のアクセントとなる役割を果たします。特に、北欧やジャパンディスタイル(日本と北欧のミックス)のインテリアでは、自然素材との調和を意識したデザインが好まれ、植物が重要な要素となっています。   ライフスタイルの変化 都市化が進むにつれて、日常的に自然と触れ合う機会が減少しました。そのため、室内に植物を取り入れることで、自然とのつながりを求める人が増えているとも考えられます。   植物が屋内に普及した歴史 植物を屋内に飾る習慣は古くから存在しますが、一般に広く普及し、当たり前の存在となったのはいくつかの段階を経てのことです。 ・古代から17世紀:富裕層の嗜み古代エジプトやギリシャ、ローマでは、既に富裕層が鉢植えの植物を屋内で楽しんでいました。中国でも盆栽文化のように古くから室内で植物を育てる習慣があります。17世紀の大航海時代には、ヨーロッパに珍しい異国の植物が持ち込まれ、貴族や裕福な人々の間で熱帯植物への関心が高まりました。 ・19世紀(ヴィクトリア朝時代):一般家庭への普及の兆し室内植物の普及に最も大きな影響を与えたのは、19世紀のヴィクトリア朝時代です。暖房技術の進歩やガラス製造の発展により、ガラス温室(ワーディアンケースなど)が普及し、繊細な熱帯植物を屋内で育てることが容易になりました。この時代には、中流階級の間でも室内植物がステータスシンボルとして広く受け入れられ、ヤシやシダなどが人気を博しました。 ・20世紀以降:より身近な存在へ第二次世界大戦後、オフィス環境に手入れのしやすい植物が導入され始めました。特に1970年代には、手軽に育てられる品種が普及し、マクラメのプラントハンガーなどと共に、家庭で日常的に植物を飾るブームが到来。より多くの人々にとって室内植物が身近な存在となっていきました。 ・現代:ライフスタイルの一部に近年では、パンデミックによる在宅時間の増加や、自然とのつながりを求める意識の高まり、SNSを通じた「ボタニカルライフ」の流行などにより、植物を自宅やオフィス、店舗に飾ることがさらに一般的で当たり前のこととなっています。   では、本物の植物でなくても、例えば植物画でも同様の効果が期待できるのでしょうか? これについては、完全に同じ効果とは言えませんが、心理的なリラックス効果や空間の印象を変える力は十分にあります。   視覚的な癒し 植物の画像や絵を見ることによって、自然を連想し、リラックスできることが研究で示されています※3。実際、医療施設やオフィスの壁に自然の風景画を飾ることで、ストレスが軽減されたという調査結果も多数ありますし、わたし自身が実感しています。 かのナイチンゲールも著作『看護覚え書』のなかで「環境が患者の回復に与える影響」について述べており、特に 「光、空気、静けさ、そして美しい景色」が重要であることを強調しています。彼女は、病室の窓からの眺めや、壁にかけられた絵などの視覚的要素が患者の精神状態に影響を与え、回復を助けると指摘しています※4。   インテリアとしての調和 植物の絵は、生花や観葉植物と違い、手入れ不要でありながら、ナチュラルな雰囲気を演出できます。特に、水彩画やボタニカルアートは、シンプルな空間にも馴染みやすく、上品なアクセントとして機能します。...

  • アートポスターの土台を選ぶ――ヴァンヌーボという答え

    アートポスターの土台を選ぶ――ヴァンヌーボという答え

    新作の校正が届くと、光を当てながら発色や紙肌の見え方を確かめます。制作の初期には、朝のやわらかな光、昼の直射、夜の照明――時間帯を変えながら、同じ絵柄をいくつもの紙で見比べたこともありました。指先に残るわずかな“ひっかかり”、黒の沈み、白の抜け、照り返しの具合。その積み重ねのなかで、私たちは ヴァンヌーボ V-FS の最厚紙に惚れ込み、以来すべてのポスターにこの紙を使っています。   ヴァンヌーボという紙の来歴 ヴァンヌーボは1994年に誕生した高級印刷用紙の代表格。「印刷適性」と「紙の風合い」という相反する要素を、デザイナー/建築家・矢萩喜從郎氏の監修で両立させた“ラフ・グロス”という発想から生まれました。紙の内部に空気を多く含むため、厚みのわりに軽い――いわゆる“嵩高(かさだか)”も特徴です。発売当初から、アートや写真の世界で高い支持を得てきました。 製造は ダイオーペーパープロダクツ(大王製紙グループ)。一方で、ファインペーパーの分野で広く知られる 竹尾 が販売を担っているため、業界では「竹尾の紙」として認識されることも多い用紙です。シリーズの中核である V-FS は、書籍やポスター、カタログ、カレンダーなどに幅広く用いられ、FSC®森林認証にも対応しています。ネーミングはフランス語の VENT NOUVEAU(新しい風)に由来します。 2019年には、環境対応を強める目的からシリーズの「V」がFSC認証へ完全移行。その際、銘柄名も「V」から「V-FS」へ一本化されました。   V-FSの“性格”をひと言で 印刷面はニュアンスのある微光沢、未印刷部は落ち着いたマット。コート紙ほどテカらず、非塗工紙ほど沈まない――発色と質感のいいとこ取り。黒が締まり、階調が自然に出るため、筆致やにじみ、余白の空気までも穏やかに伝わります。壁に掛けたときの“たたずまい”をつくるコシと嵩も、ポスターに適しています。   どこで使われてきたか(事例) ヴァンヌーボは、「印刷物そのものを作品に近づける」目的で多く使われてきました。たとえば誕生20周年の記念展 「ヴァンヌーボ×15人の写真家」。荒木経惟、森山大道、川内倫子ら15名の作品を、紙の特性を活かして追求した展示は、ヴァンヌーボの“媒体力”を示す好例です。 実制作の現場でも、会社案内やカタログ、写真集・作品冊子など“見せる”印刷物に数多く採用されています(例:新晃社の会社案内でVG系を使用)。メーカー公式でも 書籍/ポスター/カタログ/カレンダー への使用が明記されています。   私たちがV-FSを選んだ理由 試したのは、アラベール、ミセスB-F、モンテシオン、そしてヴァンヌーボ各タイプ。最厚のV-FSに決めたのは、次の三つの理由からです。 ・色が冴えるのに照り返しが穏やか――光環境が変わっても作品が落ち着いて見える。...

    アートポスターの土台を選ぶ――ヴァンヌーボという答え

    新作の校正が届くと、光を当てながら発色や紙肌の見え方を確かめます。制作の初期には、朝のやわらかな光、昼の直射、夜の照明――時間帯を変えながら、同じ絵柄をいくつもの紙で見比べたこともありました。指先に残るわずかな“ひっかかり”、黒の沈み、白の抜け、照り返しの具合。その積み重ねのなかで、私たちは ヴァンヌーボ V-FS の最厚紙に惚れ込み、以来すべてのポスターにこの紙を使っています。   ヴァンヌーボという紙の来歴 ヴァンヌーボは1994年に誕生した高級印刷用紙の代表格。「印刷適性」と「紙の風合い」という相反する要素を、デザイナー/建築家・矢萩喜從郎氏の監修で両立させた“ラフ・グロス”という発想から生まれました。紙の内部に空気を多く含むため、厚みのわりに軽い――いわゆる“嵩高(かさだか)”も特徴です。発売当初から、アートや写真の世界で高い支持を得てきました。 製造は ダイオーペーパープロダクツ(大王製紙グループ)。一方で、ファインペーパーの分野で広く知られる 竹尾 が販売を担っているため、業界では「竹尾の紙」として認識されることも多い用紙です。シリーズの中核である V-FS は、書籍やポスター、カタログ、カレンダーなどに幅広く用いられ、FSC®森林認証にも対応しています。ネーミングはフランス語の VENT NOUVEAU(新しい風)に由来します。 2019年には、環境対応を強める目的からシリーズの「V」がFSC認証へ完全移行。その際、銘柄名も「V」から「V-FS」へ一本化されました。   V-FSの“性格”をひと言で 印刷面はニュアンスのある微光沢、未印刷部は落ち着いたマット。コート紙ほどテカらず、非塗工紙ほど沈まない――発色と質感のいいとこ取り。黒が締まり、階調が自然に出るため、筆致やにじみ、余白の空気までも穏やかに伝わります。壁に掛けたときの“たたずまい”をつくるコシと嵩も、ポスターに適しています。   どこで使われてきたか(事例) ヴァンヌーボは、「印刷物そのものを作品に近づける」目的で多く使われてきました。たとえば誕生20周年の記念展 「ヴァンヌーボ×15人の写真家」。荒木経惟、森山大道、川内倫子ら15名の作品を、紙の特性を活かして追求した展示は、ヴァンヌーボの“媒体力”を示す好例です。 実制作の現場でも、会社案内やカタログ、写真集・作品冊子など“見せる”印刷物に数多く採用されています(例:新晃社の会社案内でVG系を使用)。メーカー公式でも 書籍/ポスター/カタログ/カレンダー への使用が明記されています。   私たちがV-FSを選んだ理由 試したのは、アラベール、ミセスB-F、モンテシオン、そしてヴァンヌーボ各タイプ。最厚のV-FSに決めたのは、次の三つの理由からです。 ・色が冴えるのに照り返しが穏やか――光環境が変わっても作品が落ち着いて見える。...

  • 「余白」がつくる、アートの美しい飾り方

    「余白」がつくる、アートの美しい飾り方

    画像は小川学さんの作品   壁にアートを飾ると、空間の雰囲気が変わります。  でもその印象は、絵そのものの力だけによるものではありません。  絵のまわりにある“余白”が、作品の存在感をそっと引き立てているのかもしれません。 余白とは、絵の周囲にある「なにもない空間」のこと。  何もないように見えて、実はとても大切な要素です。  このスペースがあることで、絵がより印象的に映り、空間全体にも静けさや呼吸のようなリズムが生まれてきます。 では、余白を生かしてアートを飾るには、どんな点に気をつけるといいのでしょうか。  いくつかのシンプルなコツをご紹介します。   額と額のあいだの距離感を整える 近すぎると窮屈に、遠すぎると散らばった印象に。目安としては5〜15cmほどがバランスよく見えることが多いようです。   飾る高さは“目線”を意識して 壁にアートを飾るときは、人の視線が自然に向かう高さに合わせると、空間が落ち着いた印象になります。特に単独で飾る場合は「目線=立ったときや座ったときの視線の高さ」が目安になります。   家具の上に飾るときは“余白のバランス”もポイント ソファやチェストの上など、家具との組み合わせで飾る場合には、目線に加えて上下の余白にも注目を。家具とアートの距離が近すぎると窮屈に見えてしまいますし、離れすぎてもちぐはぐに。家具と額の下辺の間に適度な余白を持たせ、額の上部と天井との距離とのバランスも整えると、空間に統一感が生まれます。   マットを使ってアートそのものに余白をつくる 作品より一回り大きな額縁にマットを合わせて額装することで、絵のまわりにやわらかな余白が生まれ、作品が引き立ち、飾る場所の印象まで変わってきます。   小さなアートを複数飾るという選択 大きなアートを一枚飾るのも素敵ですが、小さな作品をいくつか組み合わせて飾ることで、空間に軽やかなリズムが生まれます。 複数の作品を並べると、それぞれのあいだに自然な余白ができ、壁全体がひとつのまとまりとして整って見えるようになります。  視線がその「間」を通って流れていくような感覚も、小さなアートならではの心地よさかもしれません。   こうした“余白”が与える効果は、見た目の印象にとどまりません。空間に余白があることで、どこか心が安らぐような雰囲気が漂います。 アートを飾るということは、ただ絵を並べることではなく、そのまわりにどんな空間をつくるかを楽しむことでもあります。小さな作品を、少しずつ、ゆったりとした気持ちで飾っていく。絵と絵のあいだの余白にも目を向けながら、自分なりのリズムで空間を整えていく。そんな過ごし方も、アートとの心地よい付き合い方のひとつかもしれません。...

    「余白」がつくる、アートの美しい飾り方

    画像は小川学さんの作品   壁にアートを飾ると、空間の雰囲気が変わります。  でもその印象は、絵そのものの力だけによるものではありません。  絵のまわりにある“余白”が、作品の存在感をそっと引き立てているのかもしれません。 余白とは、絵の周囲にある「なにもない空間」のこと。  何もないように見えて、実はとても大切な要素です。  このスペースがあることで、絵がより印象的に映り、空間全体にも静けさや呼吸のようなリズムが生まれてきます。 では、余白を生かしてアートを飾るには、どんな点に気をつけるといいのでしょうか。  いくつかのシンプルなコツをご紹介します。   額と額のあいだの距離感を整える 近すぎると窮屈に、遠すぎると散らばった印象に。目安としては5〜15cmほどがバランスよく見えることが多いようです。   飾る高さは“目線”を意識して 壁にアートを飾るときは、人の視線が自然に向かう高さに合わせると、空間が落ち着いた印象になります。特に単独で飾る場合は「目線=立ったときや座ったときの視線の高さ」が目安になります。   家具の上に飾るときは“余白のバランス”もポイント ソファやチェストの上など、家具との組み合わせで飾る場合には、目線に加えて上下の余白にも注目を。家具とアートの距離が近すぎると窮屈に見えてしまいますし、離れすぎてもちぐはぐに。家具と額の下辺の間に適度な余白を持たせ、額の上部と天井との距離とのバランスも整えると、空間に統一感が生まれます。   マットを使ってアートそのものに余白をつくる 作品より一回り大きな額縁にマットを合わせて額装することで、絵のまわりにやわらかな余白が生まれ、作品が引き立ち、飾る場所の印象まで変わってきます。   小さなアートを複数飾るという選択 大きなアートを一枚飾るのも素敵ですが、小さな作品をいくつか組み合わせて飾ることで、空間に軽やかなリズムが生まれます。 複数の作品を並べると、それぞれのあいだに自然な余白ができ、壁全体がひとつのまとまりとして整って見えるようになります。  視線がその「間」を通って流れていくような感覚も、小さなアートならではの心地よさかもしれません。   こうした“余白”が与える効果は、見た目の印象にとどまりません。空間に余白があることで、どこか心が安らぐような雰囲気が漂います。 アートを飾るということは、ただ絵を並べることではなく、そのまわりにどんな空間をつくるかを楽しむことでもあります。小さな作品を、少しずつ、ゆったりとした気持ちで飾っていく。絵と絵のあいだの余白にも目を向けながら、自分なりのリズムで空間を整えていく。そんな過ごし方も、アートとの心地よい付き合い方のひとつかもしれません。...

  • 「飾る」ということ

    「飾る」ということ

    はじめに──小さな手間で、世界に輪郭を 「飾る」と聞くと、多くの人は花やインテリア、服装を思い浮かべるでしょう。けれど、よく見ると私たちは暮らしのあらゆる場面で何かを飾っているのではないでしょうか。例えばお祝いの言葉を、相手の顔を思い浮かべて書き直す。これも「飾る」のひとつです。 少し大げさに言うなら、飾るとは、時間の流れの中に小さなしるしを付けること。そこに自分の時間を宿すこと。そのささやかな手間が、毎日に小さな区切りや落ち着きを与えてくれるように思います。 では、この「飾る」という言葉や行為は、どこから来て、どのように広がっていったのでしょうか。   漢字の来歴──「飾」はどこから来たか 「飾」という漢字の成り立ちについては諸説あります。一般的には「人」と「飤(古い『食』の形)」を組み合わせた会意文字とされます。 人:人の姿を表す象形飤:器に盛られた食べ物を表す この二つが重なり、神や来客をもてなすために食物を美しく整える場面を表したと言われます。やがて意味は広がり、食べ物に限らず「美しく整える」「装う」という行為全体を指すようになりました。 一方で、古い字体を「布を清め整える情景」と解釈する説もあります。どちらにしても、整えることから美しく装うことへと意味が発展していった点は共通しています。暮らしを整えることと、誰かを思って用意することは、もともと同じ根から生まれているのかもしれません。 文字の成り立ちを知ると、この言葉が持つ奥行きをより実感できます。では、辞書では「飾る」がどのように説明されているのでしょうか。   辞書にある三つの顔 辞書を開くと、「飾る」には主に三つの意味が見えてきます。 物や空間、身なりを美しく整える(部屋を飾る、着飾る)言葉や文章を整える(言葉を飾る)物事の結末を美しく締めくくる(有終の美を飾る) とくに三つ目は興味深い使い方です。目に見える物だけでなく、終わり方まで「飾る」と言える。日本語は結果としての数字だけでなく、締めくくりの美しさにも目を向ける言語だと思います。 こうして意味を整理すると、次に気になるのは「飾る」という行為が私たち自身にどのような働きを持つのか、という点です。   外と内──二つの効き目と「選ぶ」という核心 「飾る」には二つの効き目があるように思います。ひとつは外見や空間を美しく見せる外的な効果。もうひとつは、自分の気持ちを整える内的な効果です。 そして忘れてはいけないのが「選ぶ」という行為です。数ある中から、今の自分にしっくりくるものを選ぶ。その過程で、自分の好みや価値観が浮き彫りになり、暮らしの輪郭も少しずつ整っていきます。 この“選ぶ”という動きこそ、飾るの中心にあるのではないでしょうか。窓辺に置くのは背の高い枝か、低い花か。写真立ては横か縦か。選ぶたびに、今の自分に合うバランスが見えてきます。飾るは、単なる作業ではなく、自分を確かめる時間でもあるのです。 では、そうした飾りは本当に「余裕のある人」だけの営みなのでしょうか。   「飾る」は余裕の産物か 「飾るのは余裕がある人だけ」と言われることがあります。けれど、人類の歴史を振り返ると、暮らしが厳しい時代にも人は器に模様を刻み、住まいに小さな目印をつくり、節目ごとに飾りを置いてきました。飾りは贅沢というより、生活に意味を求める心への答えだったのかもしれません。 野の花を小さな盃に挿す。子どもの絵を壁に留める。読みかけの本を机に一冊だけ立てておく。これだけでも空気はやわらぎ、気持ちが整います。飾るとは、日常や自分の心に目を向けることだと思います。 飾ることが暮らしの中でどう受け継がれてきたのかを見ていくと、日本独自の作法が浮かび上がってきます。   日本の作法──場を立て、節目を見せる...

    「飾る」ということ

    はじめに──小さな手間で、世界に輪郭を 「飾る」と聞くと、多くの人は花やインテリア、服装を思い浮かべるでしょう。けれど、よく見ると私たちは暮らしのあらゆる場面で何かを飾っているのではないでしょうか。例えばお祝いの言葉を、相手の顔を思い浮かべて書き直す。これも「飾る」のひとつです。 少し大げさに言うなら、飾るとは、時間の流れの中に小さなしるしを付けること。そこに自分の時間を宿すこと。そのささやかな手間が、毎日に小さな区切りや落ち着きを与えてくれるように思います。 では、この「飾る」という言葉や行為は、どこから来て、どのように広がっていったのでしょうか。   漢字の来歴──「飾」はどこから来たか 「飾」という漢字の成り立ちについては諸説あります。一般的には「人」と「飤(古い『食』の形)」を組み合わせた会意文字とされます。 人:人の姿を表す象形飤:器に盛られた食べ物を表す この二つが重なり、神や来客をもてなすために食物を美しく整える場面を表したと言われます。やがて意味は広がり、食べ物に限らず「美しく整える」「装う」という行為全体を指すようになりました。 一方で、古い字体を「布を清め整える情景」と解釈する説もあります。どちらにしても、整えることから美しく装うことへと意味が発展していった点は共通しています。暮らしを整えることと、誰かを思って用意することは、もともと同じ根から生まれているのかもしれません。 文字の成り立ちを知ると、この言葉が持つ奥行きをより実感できます。では、辞書では「飾る」がどのように説明されているのでしょうか。   辞書にある三つの顔 辞書を開くと、「飾る」には主に三つの意味が見えてきます。 物や空間、身なりを美しく整える(部屋を飾る、着飾る)言葉や文章を整える(言葉を飾る)物事の結末を美しく締めくくる(有終の美を飾る) とくに三つ目は興味深い使い方です。目に見える物だけでなく、終わり方まで「飾る」と言える。日本語は結果としての数字だけでなく、締めくくりの美しさにも目を向ける言語だと思います。 こうして意味を整理すると、次に気になるのは「飾る」という行為が私たち自身にどのような働きを持つのか、という点です。   外と内──二つの効き目と「選ぶ」という核心 「飾る」には二つの効き目があるように思います。ひとつは外見や空間を美しく見せる外的な効果。もうひとつは、自分の気持ちを整える内的な効果です。 そして忘れてはいけないのが「選ぶ」という行為です。数ある中から、今の自分にしっくりくるものを選ぶ。その過程で、自分の好みや価値観が浮き彫りになり、暮らしの輪郭も少しずつ整っていきます。 この“選ぶ”という動きこそ、飾るの中心にあるのではないでしょうか。窓辺に置くのは背の高い枝か、低い花か。写真立ては横か縦か。選ぶたびに、今の自分に合うバランスが見えてきます。飾るは、単なる作業ではなく、自分を確かめる時間でもあるのです。 では、そうした飾りは本当に「余裕のある人」だけの営みなのでしょうか。   「飾る」は余裕の産物か 「飾るのは余裕がある人だけ」と言われることがあります。けれど、人類の歴史を振り返ると、暮らしが厳しい時代にも人は器に模様を刻み、住まいに小さな目印をつくり、節目ごとに飾りを置いてきました。飾りは贅沢というより、生活に意味を求める心への答えだったのかもしれません。 野の花を小さな盃に挿す。子どもの絵を壁に留める。読みかけの本を机に一冊だけ立てておく。これだけでも空気はやわらぎ、気持ちが整います。飾るとは、日常や自分の心に目を向けることだと思います。 飾ることが暮らしの中でどう受け継がれてきたのかを見ていくと、日本独自の作法が浮かび上がってきます。   日本の作法──場を立て、節目を見せる...

  • タンジサトミさんの抽象画に、新作2点が加わりました。

    タンジサトミさんの抽象画に、新作2点が加わりました。

    抽象画家タンジサトミさんが描いた、洗練された色合いの新作が加わりました。 ざらついたテクスチャーの上に描かれた、光を感じさせる箔が印象的な作品を、紙の上に忠実に再現しています。   「HOMELAND」 淡いベージュとグリーンが溶け合い、やさしい大地や水辺を思わせる風景が広がります。表面の質感や金色のきらめきが光を受けて揺らぎ、眺めるたびに新しい表情を見せてくれます。空間に穏やかな輝きを添える一枚です。 「INNER」 深いブルーと柔らかな白が溶け合い、まるで水面から差し込む光のように静けさと力強さを漂わせます。表面の凹凸や質感が生み出す陰影は、見る角度によってさまざまな表情を見せ、日常の空間にやわらかな青の気配を広げてくれます。 タンジサトミ / Satomi Tanji 大学卒業後、外資系航空会社に客室乗務員として勤務したのち、出産を経てアーティスト活動を開始。2021年には台湾で自身初の海外個展を開催するなど、国内外で活動中。アルコールインクやアクリルを使った抽象画を中心に、アクセントとして箔を用いた、光を感じさせる作品を数多く発表している。

    タンジサトミさんの抽象画に、新作2点が加わりました。

    抽象画家タンジサトミさんが描いた、洗練された色合いの新作が加わりました。 ざらついたテクスチャーの上に描かれた、光を感じさせる箔が印象的な作品を、紙の上に忠実に再現しています。   「HOMELAND」 淡いベージュとグリーンが溶け合い、やさしい大地や水辺を思わせる風景が広がります。表面の質感や金色のきらめきが光を受けて揺らぎ、眺めるたびに新しい表情を見せてくれます。空間に穏やかな輝きを添える一枚です。 「INNER」 深いブルーと柔らかな白が溶け合い、まるで水面から差し込む光のように静けさと力強さを漂わせます。表面の凹凸や質感が生み出す陰影は、見る角度によってさまざまな表情を見せ、日常の空間にやわらかな青の気配を広げてくれます。 タンジサトミ / Satomi Tanji 大学卒業後、外資系航空会社に客室乗務員として勤務したのち、出産を経てアーティスト活動を開始。2021年には台湾で自身初の海外個展を開催するなど、国内外で活動中。アルコールインクやアクリルを使った抽象画を中心に、アクセントとして箔を用いた、光を感じさせる作品を数多く発表している。

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