風水とは?住まいを整えるための、古くて新しい空間の考え方

風水とは?住まいを整えるための、古くて新しい空間の考え方


この画像の玄関が風水的に良いとされる理由は「明るい、清潔、気の通り道が塞がれていない、植物と木の要素がある、鏡が玄関ドア正面ではない、アートの色が活気をもたらす」の6点が挙げられます。

画像のアートはELEMENTI ARTさんのFAIRY FLOWER(フェアリーフラワー)yellow



「風水」と聞くと、玄関に置くもの、方角ごとのラッキーカラー、黄色い財布などを思い浮かべる方も多いかもしれません。
金運、健康運、仕事運、恋愛運。そうした言葉と結びついて紹介されることもあり、少し占いのような印象を持たれることもあります。

けれども本来の風水は、もう少し広い考え方です。

風水とは、古代中国に由来する環境思想です。土地、建物、方位、地形、風の流れ、水の位置、光の入り方、物の配置などを見ながら、人が自然や空間と調和して過ごすための考え方として発展してきました。

英語圏の百科事典 Britannica では、風水を「重要な場所、建物、空間や物を、気の流れと調和するように配置する古代中国の実践」と説明しています。つまり風水の中心にあるのは、単に何色を選ぶかではなく、空間全体をどのように整えるかという視点です。


「風」と「水」が意味するもの

風水という言葉は、文字通りには「風」と「水」を意味します。
風は目に見えない流れを、水は地形や生命を支えるものを象徴します。

昔の人々にとって、風通しのよい場所、水に恵まれた場所、日当たりのよい場所、災害を受けにくい場所を選ぶことは、住まいの安定に直結していました。どこに家を構えるか。建物をどの向きにするか。周囲の山や川とどう関係するか。こうした判断は、日々の安全や農耕、家族の繁栄にも関わる大切なものでした。

風水は、住居だけでなく、墓地や都市、庭園、建築の配置にも関わる考え方として使われてきました。Britannica では、風水は古くは早期の周王朝にまでさかのぼる考え方とされ、「風水」という語は郭璞に帰される『葬書』に見られると説明されています。

現代の私たちに置き換えるなら、風水は「過ごしやすい環境をどうつくるか」という知恵として見ることができます。玄関が暗く散らかっていると、家に入ったときの気分は少し重くなります。寝室に物が多すぎると、落ち着いて眠りにくくなることがあります。動線がふさがれている部屋では、何気ない移動にも小さなストレスが生まれます。

このように、空間の状態が気分に影響するという感覚は、風水という言葉を使わなくても、多くの人が実感できるものです。


 気の流れを整えるという考え方

風水では「気」という概念が重視されます。
気とは、中国思想において、生命や宇宙に行き渡るエネルギーのようなものとして語られてきた概念です。

もっとも、現代の住まいでこの「気」を厳密に信じる必要はありません。実用的に考えるなら、気の流れとは、空気の流れ、光の入り方、人の動き、視線の抜け、部屋に入ったときの印象などを含むものと捉えると分かりやすくなります。

玄関から入ったときに、明るく整った空間が見える。窓のまわりに物を置きすぎず、自然光が入る。家具の配置に無理がなく、部屋の中を歩きやすい。日々使うものが、必要な場所にきちんと収まっている。
これらは、いわゆる「開運」の前に、まず住まいの快適さを支える基本です。

風水が長く語り継がれてきた背景には、このような実感に近い部分があるのだと思います。


 欧米での風水の受け止められ方

風水は中国由来の考え方ですが、欧米でも広く知られています。
一方で、欧米で語られる風水は、伝統的な中国風水そのものというより、インテリアデザインや日常の空間づくりの文脈で受け入れられていることが多いです。

Rochester Institute of Technology の学位論文では、西洋文化で広く見られる Modern Feng Shui、または BTB Feng Shui は、風水を西洋で適用しやすくする目的を持つ一方、原理を単純化することで本来の核心から離れてしまう可能性があると指摘されています。

東洋の伝統思想としての風水が、欧米では「心地よい家をつくるためのデザインの考え方」として再解釈されており、そこには、文化の翻訳とも言える変化があります。

本来の風水が、土地や地形、方位、気の流れを含む総合的な環境思想だったとすれば、現代の欧米で語られる風水は、よりインテリア寄り、心理的快適さ寄りにアレンジされていると見ることができます。


 方位、五行、色の考え方

風水には、方位や五行の考え方もあります。
五行とは、木・火・土・金・水という5つの要素で、自然や物事の性質を捉える中国思想の枠組みです。

現代の風水では、この五行が色や素材、形、インテリアにも結びつけられます。International Feng Shui Guild では、五行は木・火・土・金・水であり、それぞれの要素は形、色、実際の物、アートなどを通じて空間に取り入れられると説明されています。同時に、五行の取り入れ方に唯一の正解があるわけではないとも述べられています。

たとえば、木は植物やグリーン系、火は赤や照明、土はベージュや陶器、金は白や金属、水は黒や水のモチーフと結びつけて語られることがあります。

とはいえ、色を使えば必ず運気が上がるわけではありません。
「黄色い財布にすればお金が貯まる」「この方角にこの色を置けば成功する」「この色の絵を飾れば幸運になる」といった表現は、風水の象徴体系をかなり分かりやすくしたものです。色には気分を変えたり、空間の印象を整えたりする力はありますが、特定の色が収入や健康を直接変えると確認されたわけではありません。


色の効果は、ある。でも決まりきったものではない

では、色の効果そのものはまったくないのでしょうか。
そうとは言い切れません。

色彩心理の研究では、色が人の印象、感情、注意、期待、行動に影響する場合があることは示されています。Elliot と Maier のレビューでは、色は重要な意味を持ち、人の感情、認知、行動に影響を与える場合があると整理されています。

一方で、その感じ方は色そのものだけで決まるわけではありません。
その人の経験、文化、年齢、性格、体調、照明環境、周囲の色との組み合わせによって変わります。

同じ色でも、ある人には穏やかに見え、別の人には寂しく見えることがあります。明るく感じる色が、別の人には少し落ち着かない色に見えることもあります。好きな色だったはずなのに、部屋の照明や家具と合わせると、思っていた印象と違って見えることもあります。

つまり、色には一定の共通傾向はあります。
けれども、最終的な感じ方や行動への影響には個人差が大きいのです。

そのため、色風水は「守るべき決まり」として受け止めるより、空間を考えるための手がかりとして見るくらいがちょうどよいと思います。
「この方角にはこの色でなければならない」と縛られるよりも、自分がその場所で無理なく過ごせるか、毎日見ていて負担がないか、部屋全体と自然になじんでいるかを大切にした方が、現代の住まいには取り入れやすくなります。


現代の住まいに風水を取り入れるなら

現代の住まいでは、古典的な風水をそのまま当てはめるのは難しい場合があります。
マンションでは玄関や窓の方角を自由に変えることはできませんし、土地の形や周囲の環境も自分では選べないことがあります。

だからこそ、風水を住まいに取り入れるなら、絶対的な正解を探すよりも、日常の環境を見直すための視点として考えるのが自然です。

玄関を明るく保つこと。不要なものをため込みすぎないこと。寝室には落ち着ける素材や家具の配置を考えること。仕事をする場所には、集中しやすい環境を整えること。植物やアートを取り入れて、空間に変化をつくること。
こうした工夫は、風水を信じるかどうかに関係なく、生活の質を少しずつ整えてくれます。

また、「整理整頓された空間こそ正しい」と決めつける必要もありません。
すっきりと片づいた部屋に落ち着く人もいれば、本や道具、雑貨、作品に囲まれた空間に安心する人もいます。何も置かない部屋が心地よい人もいれば、好きなものが少しずつ積み重なった部屋に、自分らしさを感じる人もいます。

大切なのは、決められた正解に合わせることではなく、自分の住まいにとって無理のないバランスを探すことです。風水は、そのための手がかりとして考えると、現代の空間にも取り入れやすくなります。


アートと風水のほどよい関係

アートを飾ることも、空間の印象を整える方法です。

壁に一枚の作品があるだけで、部屋の見え方は少し変わります。何もなかった場所に視線の行き先が生まれ、家具や窓、棚とのあいだに新しい関係ができます。毎日通る廊下や、ふと目に入る玄関、長く過ごすリビングに作品があると、その場所に小さな表情が加わります。

風水の考え方をアートに取り入れる場合も、「ここに飾れば運気が上がる」と決めつけるより、その作品が自分の住まいにどう映るかを感じてみる方が自然です。

部屋に入ったときに視線が自然に向かい、毎日見ていて無理がない。家具や床、カーテンとほどよくなじみ、ときどき眺めたくなる。
その感覚は、数字やルールでは測りにくいものですが、日常の中ではとても大切です。

風水をアートに取り入れるなら、運気を操作するためではなく、自分にとってよい眺めをつくるため。
そのくらいの距離感で向き合うと、アートも風水も、より自然に住まいの中へなじんでいきます。


風水は、住まいを見直すきっかけになる

風水は、科学的にすべての効果が証明されたものではありません。
特定の色や方角が、収入や健康を直接変えると断定することはできません。

それでも風水が長く親しまれてきたのは、住まいや空間が人の気分に影響することを、多くの人が経験的に知っているからかもしれません。

玄関が整っていること、寝室でよく眠れること、光が入り風が通ること、好きな絵が飾られた壁があること。こうした小さな要素が重なると、住まいは少しずつ居心地のよい場所になっていきます。

風水とは、何かを信じ込むためのものではなく、住まいを少し丁寧に見直すための視点。
そう考えると、古くから伝わるこの考え方は、現代の生活にも穏やかに取り入れられるものだと思います。



出典

Britannica「Feng shui」
https://www.britannica.com/art/fengshui

International Feng Shui Guild「What are the Feng Shui Five Elements?」
https://www.ifsguild.org/the-five-elements/

Elliot, A. J. & Maier, M. A. “Color Psychology: Effects of Perceiving Color on Psychological Functioning in Humans.” Annual Review of Psychology, 2014.
DOI: 10.1146/annurev-psych-010213-115035
https://doi.org/10.1146/annurev-psych-010213-115035

Rochester Institute of Technology, Wu, Shih-Jung “Feng Shui: A Comparison of the Original Concept and Its Current Westernized Version.”
https://repository.rit.edu/theses/10226/


 

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