抽象画がよくわからないと感じる方へ

抽象画がよくわからないと感じる方へ

画像は滝本優美さんのアトリエより。

 

「抽象画ってよくわからない」とおっしゃる方が一定数いらっしゃいます。そのお気持ち、よーく理解できます。実はわたしも同じです。でも、わからないのが当たり前で、無理にわかろうとする必要もないというのが個人的な意見。

今更ですが、「抽象的」という言葉の意味について考えてみましょう。

めちゃくちゃざっくりしてますが、私の解釈では、

「具体的」=くっきり

「抽象的」=ぼんやり

解像度の高低ではありませんが、こんな感じです。。

絵画も同じで、目に見えるもの、たとえば人物や風景をそのまま描いたものは「具象画」と呼ばれています。それに対して、「抽象画」は画家が感じたことや想いを、自由に表現したものになります。基本的には目に見えないものを描いた作品と言えばわかりやすいかもしれません。

抽象画の最大の魅力は、やはりその自由度でしょう。具体的な形や物が描かれていないだけでなく、そもそも作者のはっきりとした意図がなかったりするため、鑑賞者は自分の気持ちや経験をもとに、作品の意味を自分なりに感じたり想像したりすることができるのです。そのため同じ絵でも見る人によって感じ方が違い、見るたびに新しい発見があるのもうれしい特徴です。

さて、抽象画の中には、風景や人物をモチーフにしたものもありますが、具体的に描かれているわけではなく、形や色が抽象化されています。たとえば、山や海の風景を描いた「抽象風景画」では、色や線を使って、風景の印象だけが表現されます。青や緑の色が多く使われていれば、「海」を連想させるかもしれませんが、見る人によっては異なるイメージが浮かぶこともあります。同じ人が見ても昨日は海に見えたけど、今日は心の静寂を感じるなんて当たり前にあるくらいですから(笑)。

 他にも「抽象人物画」は、人間の顔や体が幾何学的な形や線で表現されていて、なんとなく人の姿や動きが感じ取れます。有名どころで言うとピカソのキュビズム作品なんかは、人物がさまざまな角度から見た形に分解されて描かれており、独特な表現方法で楽しませてくれますので機会があれば是非ご覧ください。

このように抽象画は、観る人に感じる喜びや考える楽しさを与えてくれるアートです。悩む必要なんてありません。わかるわからないといった感覚は無視して、自由な表現と多様な解釈の可能性を感じながら、自分だけの楽しみ方を見つけてみてはいかがでしょうか。毎日眺めるのが楽しくなりますよ。 

日本の若手や実力派の作品を集めた当店自慢の「抽象画」は、こちらからご覧いただけます。

 

■ 参考までに抽象画の様々な技法、スタイルをまとめてみました。

 

1. 幾何学抽象 (Geometric Abstraction)
これは、四角や丸みたいなシンプルな形を使って描くスタイルです。秩序があって、全体のバランスがすごく大事。例えば、ピート・モンドリアンの絵は直線と原色の組み合わせで作られていて、一見シンプルだけど、よく見るとすごく考えられたデザインです。

●見るポイント: 形と色の組み合わせがどうバランスしてるかを、ちょっと引いた目で楽しむのがコツかも。

2. 抒情的抽象 (Lyrical Abstraction)
これはアーティストの感情やインスピレーションがそのまま表れている感じ。規則とか気にせずに、自由に描かれた作品が多いですね。ジョアン・ミロとか、カンディンスキーの作品が有名で、どれもカラフルで独特な形がたくさんあります。

●見るポイント: 何か規則を探そうとするんじゃなくて、その瞬間に自分が感じたままに見るのが一番です。

3. カラーフィールド・ペインティング (Color Field Painting)
これは色そのものを楽しむスタイル。形とかはほぼなくて、ただ広がる色を見て、その色が自分にどう感じるかっていうアートです。マーク・ロスコの作品が典型例で、彼の絵は大きな色の層がふわっと広がってる感じがします。

●見るポイント: 色の広がりとか、微妙な色合いの変化をゆっくりと楽しむことですね。

4. 抽象表現主義 (Abstract Expressionism)
ここは感情爆発!アーティストの内面が絵にそのまま出ちゃってます。アクション・ペインティングで有名なジャクソン・ポロックの「ドリッピング技法」なんかは、絵具をキャンバスにバシャっと飛ばして、動きのある作品を作ることで有名です。

●見るポイント: 作品が持つダイナミックな動きを感じ取って、アーティストのその時の感情に思いを馳せてみると楽しいかも。

5. ミニマルアート (Minimal Art)
めっちゃくちゃシンプルなアートです。無駄な要素を全て取り除いて、最低限の形や色だけで構成されてる。ドナルド・ジャッドの作品とかが有名で、無機質でクールな印象があります。

●見るポイント: シンプルだけど、その中にあるバランスや空気感を味わうのがミニマルアートの楽しみです。

6. オプ・アート (Op Art)
これは目の錯覚を利用したアート。パターンや色の使い方で、まるで動いているかのように見える作品もあります。ヴィクトル・ヴァザルリの作品は、見てると目が錯覚を起こして不思議な感覚になりますよ。

●見るポイント: どんなふうに目がだまされているのか、ちょっとずつ近づいたり離れたりしながら観察するのが面白いです。

 

 

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