アートポスターの色褪せを抑えるには?|フレーム素材と窓辺の紫外線対策

アートポスターの色褪せを抑えるには?|フレーム素材と窓辺の紫外線対策


「太陽光が直接当たらない場所に飾っていたのに、いつの間にか色が変わった気がする」

そんな声を、これまでにも耳にしたことがあります。

アートポスターの色褪せには、さまざまな要因が関係します。今回はそのなかでも、室内で比較的対策しやすい「紫外線」に注目しました。

フレームの前面素材によって、作品の色褪せ方はどのように変わるのか。窓から入る紫外線は、どこまで気にした方がよいのか。

実験データをもとに整理してみます。


色褪せの大きな要因のひとつが紫外線

アートポスターの色褪せは、紫外線だけで起こるものではありません。目に見える光、熱、湿度、酸素のほか、紙やインクの材質など、複数の要因が重なって進みます。

ここでいう「目に見える光」とは、太陽光や照明のうち、私たちが明るさや色として感じている光のことです。専門的には「可視光」と呼ばれます。

そのなかでも、室内で比較的対策しやすいのが紫外線です。

照明から生じる紫外線量について、今回参照した資料では、快晴時の太陽光を100とした場合、白熱灯は0.4、蛍光灯は0.1、LED照明は0.002程度という比較値が示されています。

白熱灯や蛍光灯にも紫外線は含まれますが、太陽光と比べればごくわずかです。LED照明では、さらに小さな値となっています。

ただし、これはすべての照明器具に共通する絶対値ではありません。電球や照明器具の種類、製品ごとの性能、作品までの距離、光の明るさ、点灯している時間などによって、作品が受ける影響は変わります。

一般的な白色LED照明は、紫外線や赤外線をほとんど含まず、光の大部分が目に見える範囲にあるとされています。そのため、紫外線による色褪せを抑えるという点では、白熱灯や蛍光灯よりLED照明が適しています。

もっとも、LED照明なら色褪せが起こらないわけではありません。目に見える光も作品の劣化に関わるため、強い光を近い位置から長時間当て続けることは避けた方が安心です。

ちなみに、窓から入る紫外線は天気によっても変わります。

曇りの日でも紫外線がなくなるわけではありません。気象庁によると、薄曇りでは快晴時の約80〜90%、曇りでも約60%程度の強さの紫外線が届くとされています。

※上図は気象庁「雲と紫外線」の情報をもとに、AIで作成しました。


フレームの前面素材で、色褪せの進み方は変わる

額縁の前面には、主にガラス、アクリル、PET板が使われます。これらの素材によって、作品の色褪せ方にどのような違いが生じるのでしょうか。

額縁や額装用品を扱う安井商店では、その違いを確かめるため、東京都立産業技術研究センターに、人工的に強い光を当てて色の変化を調べる試験を依頼しています。正式には「キセノンアーク灯式の促進耐光性試験」と呼ばれるものです。

キセノンアーク灯とは、太陽光に近い性質の強い光を再現する試験用のランプです。これを一定時間当てることで、長期間光を受けたときに起こる色褪せや黄変の傾向を、比較的短い期間で調べます。

試験時間は300時間。ガラス、アクリル3種(一般・UVカット・ミュージアム)、PET板、表面保護なしの6パターンを用意し、印刷物の色褪せを比較したものです。結果は

表面保護なし > ガラス > PET板 > アクリル3種 

の順となりました。


 PET板という選択

当店では、額縁の前面材にPET板を使用しています。

PET板の特徴は、透明性が高くしなやかなこと。ガラスはもちろん、硬質なアクリル板と比べても、曲げや落下によるひび割れが起こりにくいこと。また、塩素を含まないため、適切に焼却された場合には、塩素系の有害ガスが発生しにくいという性質もあります。

一方、色褪せ防止という点では、今回参照した試験において、ガラスより色褪せが少なく、アクリルよりはやや劣ります。そのうえで当店がPET板を選んでいるのは、作品を守る性能と安全性、価格のバランスを重視したためです。
アートポスターを日常のなかで気軽に飾り、季節や気分に合わせて入れ替えていただく。そうした使い方に適した前面材だと考えています。


窓辺でもできる、紫外線対策

フレームの前面素材だけでなく、作品を飾る部屋の窓でも紫外線対策は可能です。

一般的な窓に広く使われているのが「フロートガラス」です。溶かしたガラスを溶融金属の上に流して作る、平滑でゆがみの少ない透明な板ガラスを指します。

フロートガラスは単板窓に使われるほか、複層ガラスを構成するガラスとしても用いられます。

厚さにもよりますが、紫外線をおよそ3割前後カットします。ちなみにメーカー資料では、3mmで約27%、4mmで約31%、5mmで約35%程度という数値が示されています。

一方の「Low-E複層ガラス」は、2枚以上のガラスの間に空気層などを設け、ガラス面に特殊な金属膜をコーティングしたものです。

「Low-E」はLow Emissivity、つまり低放射を意味します。主な目的は、室内外の熱の出入りを抑えること。断熱性や遮熱性が高く、製品によっては一般的な単板ガラスより高い紫外線カット性能も備えています。

紫外線の入り方を左右するのは、窓に使われているガラスの種類や構成です。

では、自宅の窓がどのタイプなのか、どのように確認すればよいのでしょうか。

板硝子協会の調査によると、断熱性能の高いLow-E複層ガラスは、京都議定書が発効した2005年頃から普及が進みました。

その速度は、住宅の種類によって異なります。新築一戸建てでは2017年に8割を超えた一方、新築マンションなどの共同住宅では、2019年度に4割を超え、2020年度は56.5%、2023年度には67.2%となっています。

この傾向から見ると、2006年前後に建てられたマンションでは、Low-E複層ガラスが採用されていない可能性があります。

ただし、Low-Eではないことと、単板ガラスであることは同じではありません。Low-E膜のない一般複層ガラスが使われている場合もあります。

物件の仕様や、サッシ・窓ガラスの交換履歴によっても状況は変わります。築年数だけで判断せず、ガラスやサッシに表示された認証マーク、品番、住宅の仕様書などを確認するのが確実です。

わからない場合は、管理会社や施工会社へ問い合わせる方法もあります。


普通のレースカーテンにも効果がある

窓ガラスにレースカーテンを1枚重ねるだけでも、紫外線はさらに減少します。

カーテン販売店による実測例では、UVカット表示のない一般的な薄手のレースカーテンでも、ガラスを通過したあとの紫外線量を、さらに50〜65%程度カットできたという結果が出ています。

UVカット機能を備えたレースカーテンのなかには、より高いカット率をうたう製品もあります。ただし、性能は商品によって異なり、UVカット率が高いほど自然光を取り込みにくくなる場合もあります。購入する際は、各商品の試験値や品質表示を確認するとよいでしょう。

では、フロートガラスと普通のレースカーテンを組み合わせると、どの程度の効果が見込めるのでしょうか。

フロートガラスの紫外線カット率を34%、UVカット加工のないレースカーテンのカット率を52%とした場合、単純計算では次のようになります。

* ガラスを通過する紫外線:66%
* そこからレースカーテンを通過する紫外線:66%×48%=約32%
* 合計のカット率:約68%

これは、異なる実験や調査から得られた数値を掛け合わせた推定値です。この組み合わせ自体を直接測定した結果ではありません。

それでも、「ガラス1枚だけより、レースカーテンを重ねた方が効果は高まる」という方向性を知る目安になります。


窓の有無より、光の当たり方が大切

一般的な室内であれば、窓の有無を過度に気にする必要はありません。

窓から入る紫外線は、ガラスを通過する段階である程度減少します。レースカーテンを重ねれば、さらに抑えられます。照明から生じる紫外線量も、太陽光に比べると大幅に少ないものです。

日常的な対策で最も大切なのは、窓のある部屋を避けることではなく、作品に直射日光が長時間当たらない場所を選ぶことです。

日差しの強い時間帯だけレースカーテンを閉める。窓ガラスに密着するような位置を避ける。強いスポット照明を近い位置から当て続けない。

こうした基本的な配慮で、色褪せの進行は抑えやすくなります。

もちろん、光による色褪せを完全になくすことはできません。それでも、一般家庭でアートポスターを楽しむうえで、窓のある部屋だからと必要以上に心配することはないでしょう。


まとめ

* 色褪せには紫外線以外の要因も関係するが、室内では紫外線対策が比較的取り組みやすい
* 参照した比較値では、照明から生じる紫外線量は太陽光100に対して、白熱灯0.4、蛍光灯0.1、LED照明0.002程度
* フレームの前面素材によって、作品の色褪せの進み方には違いがある
* 今回参照した試験では、PET板はガラスより印刷物の色褪せが少なく、アクリルよりはやや多い結果となった
* PET板には、軽くて割れにくく、日常的に扱いやすいという利点がある
* 窓ガラスの種類や構成によって、室内に入る紫外線量は変わる
* 一般的なレースカーテンでも、紫外線対策として一定の効果が見込める
* 窓の有無よりも、直射日光や強い光がどの程度、どのくらいの時間当たるかが重要


大切な作品を長く楽しむために、必要なのは大がかりな対策ではありません。大事なのは3点だけ。

● 直射日光を避ける。

● 日差しの強い時間帯にはレースカーテンを使う。

● 強い照明を近くから当て続けない。

フレームと飾る場所の両方から、無理なくできる対策を取り入れてみてはいかがでしょうか。


 

【出典】

・額縁専門店ないとう「ガラス・アクリル・UVカットなど種類別の特徴と選び方」
・安井商店「【保存額装】UVカットアクリルの効果検証」(東京都立産業技術研究センター試験)
・東京都立産業技術研究センター「キセノンランプ式促進耐候性試験機」(試験条件の参考情報)
・セントラル硝子プロダクツ「板ガラスの光学的性能・熱的性能」
・PETボトルリサイクル推進協議会「PETボトルの安全性」「PET樹脂の特性」
・カーテンハウスシルクみどり店「レースカーテンの紫外線(UV)カット率を測定してみた」
・板硝子協会「複層ガラス/Low-E複層ガラス普及率の推移」
・国土交通省「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」ヒアリング資料
・環境省「あかり未来計画」
・照明学会誌「LED照明の発展(1)LED照明の概要」
・紫外線量の比較値を掲載する解説資料(太陽光100、白熱灯0.4、蛍光灯0.1、LED照明0.002)

※本コラムは、複数の第三者による実験・調査資料を参照して構成しています。個別の前面材、照明器具、窓ガラス、カーテンの性能は製品によって異なります。正確な仕様については、各メーカーや管理会社などへご確認ください。



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