画像は2025年の個展「花の模様」より
青山佳世さんは、小さい頃から絵を描くことが好きで、授業中もノートに落書きをしているような子どもだったそうです。大阪外国語大学でスウェーデン語を専攻し、在学中に一年間、現地の国民高等学校の美術科へ留学。留学中に目にした制作環境——大きな機織り機、シルクスクリーンのプリント工房、木工や陶芸の工房、昼夜を問わず自由に制作できる教室——に胸を躍らせ、卒業後に再びスウェーデンへ渡り、ヨーテボリ大学デザイン学部へ進みました。


青山さんが通ったキャンパス Photo by Natalie Greppi
模様との出会い
現地の大学2年目、青山さんはテキスタイルの授業で初めて「総柄模様」の作り方を学びました。紙を十字に切り、場所を入れ替えながら描いていくことで、一枚の絵が繰り返しのある模様へと変わっていく。その仕組みとの出会いは、大きな衝撃だったようです。
ちょうどその頃は、「絵を描いて仕事をしていくにはどうしたらいいのだろう」と悩んでいた時期でもありました。そんな中で「模様を作ることで、自分の描いた絵がデザインになるんだ」という気づきは、今も鮮明な記憶として残っているそうです。
翌年には、オランダのテキスタイルミュージアムでミナ ペルホネンの展示を観て深く感銘を受け、同じ時期にスウェーデンの壁紙メーカー Sandberg tapeter でのインターンも経験しました。寒く暗い冬が長いスウェーデンでは、家の中を心地よく整える文化があり、植物をモチーフにした壁紙が多くの家庭で親しまれています。デザイナーの手描き作業や職人の技術を間近で見たことも、青山さんにとって大きな学びとなったとのこと。
帰国後はミナ ペルホネンで約3年間アシスタントとして勤務。壁紙と洋服では分野は違っても、手描きの柄が人の心を惹きつけたり、癒やしたりすることは同じ。その思いが、自分自身の図案を生み出したいという気持ちへとつながり、フリーランスとしての活動が始まりました。
120の図案、それでも尽きない試み
以来、青山さんは「リピートできる総柄模様」にこだわりながら制作を続けてきました。これまでに手がけた図案は、120ほどにのぼります。
模様の構成、リピートの仕組み、画材の選び方、モチーフとの出会い。試してみたいことは、今も尽きません。
「模様が出来上がった時にはいつも『こんなのができた!』と新鮮な気持ちで眺めていて、それが楽しいのです」
描いている最中には、リピートされたときの全体像がはっきり見えているわけではありません。ひとつの図案が繰り返され、広がっていくことで、思いがけない表情が現れる。その予測しきれない面白さが、制作を支えているそうです。
手の跡を残すこと
青山さんが一貫して大切にしているのは、手で描いた線のブレ、絵の具のにじみ、意図せずに生まれた色の塗りムラです。それらは整えきれないものとして残るのではなく、作品に自然な呼吸を与えます。その揺らぎを、青山さんは「自分が自然の一部であることの表れのような気がする」と表現します。
3年ほど前から取り組んでいる陶芸にも、同じ姿勢が流れています。土や釉薬、焼き上がりは、思い通りにコントロールできることばかりではありません。「出来上がりをコントロールしようとしすぎないこと」——模様作りにも陶芸にも共通する、大切な感覚です。
当店にご提供いただいた作品「POTTERIES」の制作動画
暮らしのそばにある絵
青山さんが近年よく描くのは、草花や生き物、果実や野菜など、暮らしのそばにあるモチーフです。道端の雑草、庭に咲く花、手に取った食材の鮮やかな色。そうした日常の中の小さな出会いが、作品の出発点になっています。
有機的なモチーフに惹かれるのは、それらが「人の気持ちに寄り添えるような気がする」から。部屋に植物を飾ると生活に彩りが生まれるように、自分の作品も誰かの暮らしにそっと寄り添うものであってほしい。植物にはそれぞれ季節があるので、季節ごとに作品を変えて飾ってもらえるようなものが今後作れたら——青山さんはそう語ります。
強く主張するのではなく、暮らしの中で静かに時間を重ねていくもの。描くモチーフへの愛情が伝わってくる青山佳世さんの作品には、そんな魅力があります。絵の中に、描いた人の気配が感じられる——そう思わせてくれるのも、青山さんの作品ならではです。

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